国土交通大臣賞受賞挨拶
作品名 こめぐら付移動式ミニログハウス
このたびは、一般社団法人 日本ログハウス協会主催のログハウス建築コンテストにおいて、国土交通大臣賞(ログハウス大賞)を受賞させて頂き、まことにありがとうございます。
ログハウス大賞を頂いております国土交通省、農林水産省(林野庁)、そして安藤先生を委員長として審査頂きました委員の皆様や、関係者の皆様に深く感謝と御礼申し上げます。
近年においては、ログハウス建築は老人ホームやアパート、公共建築物等大型化しており、最近のコンテストの受賞作品もまた、それに伴い、大型物件が主流をしめておりましたので今回当社がエントリーしました『こめぐら付移動式ミニログハウス』は10m²未満の小さな建物ですので、まさか、ログハウス大賞の国土交通大臣賞を頂くとは夢にも思っておりませんでしたので、私自身たいへん驚いております。
受賞させて頂いた『こめぐら付移動式ミニログハウス』を建築するに至るまでには、いろんな方々の思いやお力添えがありました。
クライアントの社会福祉法人 巌松福祉会 ひかり幼育園の園長さま始め、職員の方々と園児達は一丸となって田植えから稲刈りをみんなで行っております。そして収穫した米をお昼の給食のごはんとしてみんなで食べるという年中行事が組まれていることを、NPO未来21の会の活動を通じて知ることが出来ました。そこで私たちは、自然農園で耕作を行って収穫した米を、奈良の正倉院に習い、ログハウスならゼロエネルギーで保存出来ることの証明にチャレンジいたしました。
今は、昨年収穫した米が「もみ」の状態で約2tこめぐらに貯蔵され、必要なだけ精米しながら、毎日の園児達の給食に使われています。
一方、ログハウスの木材を産出する国内森林においては、地球温暖化による局地的な集中豪雨で災害が巨大化しており、特に間伐材の処理が急務であることは申し上げるまでもありません。ひとたび土砂崩れが起これば、石や砂や土は川底に沈みますが、なぎ倒された木材は、激流に乗って橋桁を突き崩し、堤防を破壊し、街中にも甚大な災害をもたらすようになりました。
そこで私たちは、間伐期を迎えた杉、桧を使って災害対策用ミニログハウスを全国で造ることを考えました。
そして具現化の第一歩として、ひかり幼育園様とコラボレーションをはかり、この様な形で「こめぐら付移動式ミニログハウス」を完成させました。
常温貯蔵のこめぐら、そして園児が土足のまま遊べる室内とスロープ、さらに移動用のタイヤをつけたログハウスは、毎日子供達のはしゃぎ声でいっぱいです。
このたびの受賞でなによりも嬉しく思うのは、ひかり幼育園様とのコラボで完成したこの建物は、10m²にも満たない小さなものですが、園児たちがすこやかに育てと願う園長様の気持ちと、日本の森林の未来を見据えながらログハウスを手掛ける私達との絆がこのような形で高く評価されたことにつきます。
私達は、このミニログハウスをホタルに例えて表現しています。
一匹のホタルは光を放っても、あまりにも小さく、か細いので、ただの虫としか認識できないかもしれません。しかしホタルが100匹、1000匹、10000匹集まれば、小さな光の集まりが闇夜を照らす幻想的な世界を造り、人々に感動さえ与えてくれます。そして、このミニログハウスも一棟だけだと、ただのログハウスにしか過ぎないのかもしれません。しかし、100棟、1000棟、10000棟全国各地に出来れば、平時は人々の憩いの場として使い、そして災害が発生した時は、防災シェルターとして一ケ所に集められ、仮設住宅として利用することが可能なのです。
小さく造り、そして集めれば大きな役割を果たすことが出来る証明へのチャレンジを始めました。私達の夢のプロジェクトの第一歩に、国土交通大臣賞(ログハウス大賞)という最高の賞を頂き大変ありがたく思います。
すべての皆様に心より感謝を込めて御礼申し上げます。
平成25年6月7日 嶋﨑健一